まず、このページではフランカーがどんな仕事を任されているのか、そしてどんなスキル(能力)が優れているのかという点について紹介します。
背番号6番と7番の役割の違い、そして、フランカーが15人の中でどれほどスペシャリストな存在なのか、チームを勝利に導くために、どれほど重要なポジションなのか、理解する事が出来ます。
また、フランカーとしてチームにどのように貢献したらよいのか迷っている人は、自らの方向性を決断する事が出来るでしょう。
フランカーは、タイトファイブ(1番〜5番)よりも強いアタックスキルで、相手を弾き飛ばすパワーを持っており、チームで一番タックル能力が優れています。
ハンドリング能力も優れており、スピードもあり、敏捷性とモビリティー、強さと耐久性を持ち備えた、プロフェッショナルです。
フランカーの基本的な役割
ディフェンス(守り)では他のポジションの誰よりも多くタックルに行き、ピンチをチャンスに変えます。フランカーのディフェンス力はチームメイトからもコーチ陣からも熱い信頼を得ています。
ソース:Zimbio
アタック(攻撃)では自らもボールを持ってトライを取りに行きますが、見方のボールキャリアがタックルされれば、誰よりも早く相手との接点に入りボールを確保します。
下記画像を見てください。黄色チームのボールキャリアが倒されボールを取られそうになっている所を、フランカーが駆けつけ「俺の仲間に手を出すんじゃねー!」と言わんばかりのプレーでボールを確保しています。
日本では「仕事人」とも呼ばれるフランカーですが、あらゆる場面・あらゆる場所でチームの為に体を張った仕事をしてくれます。
ディフェンスが優れているフランカー、アタックが優れているフランカー、サポートが優れているフランカー、ボールキャリアとして優れたフランカーなど、バランスよくメンバーを選出しているチームが多いようです。
フランカーのスキル
もし、あなたがリッチー・マコーのような偉大なフランカーになりたいのであれば、下記のスキルを身につける必要があります。
・ブレイクダウンでボールに絡むスキル
・タフなタックルスキル
・優れたハンドリングスキル
・味方との強固なコミュニケーションスキル
・上記4点を80分間維持するの能力
そして、「偉大な」フランカーは背番号6番と7番の2人です。この2人の違いですが、右サイドフランカー/左サイドフランカーという分けられ方、またはオープンサイドフランカー/ブラインドサイドフランカーという分けられ方をします。
有能なコーチは必ず6番はブラインドサイドフランカー、7番はオープンサイドフランカーとして選手を構成します。
同じフランカーですが、それぞれの役割は異なり、どちらもチームを勝利に導く上で重要な役割を担っています。
例を挙げてみますと、2015年のワールドカップ オーストラリアの第3列には、2人のオープンサイドフランカーがスタメンとして出場していました。
マイケル・フーパーとディヴィッド・ポーコックです。2人ともオーストラリアを代表する偉大なフランカーで、共に世界最高峰のプレイヤーと称されるほどです。
ファンの間では、「どちらがオープンフランカーとして出場するのか?」「フーパーが7番で、ポーコックが6番か?」と少々話題になっていました。
予想では、マイケル・フーパーが7番、ディビット・ポーコックが6番でしたが、ワールドカップのグランドの上で2人が着ていた背番号は7番と8番でした。
そして、6番を任されたのは、ブラインドサイドフランカーのスペシャリスト スコット・ファーディー(1984年7月生)でした。
http://www.zimbio.com/Scott+Fardy/pictures/pro/2013
遅咲きではありますが、ブラインドサイドフランカーとしてメキメキと頭角を現した選手です。
スコットファーディーと言えば、2009年〜2012年までトップリーグの下部リーグ。トップイーストの釜石に在籍していました。
そして、初めてオーストラリアの代表として選出されたのは帰国後の2013年8月17日オールブラックス戦です。29歳の時でした。
一方でディヴィビット・ポーコックは、2008年11月のオールブラックス戦20歳が代表デビュー戦。マイケル・フーパーは、2012年6月のスコットランド戦20歳で代表入りしています。
2人とも、若くしてオーストラリアを代表し、世界最高峰のフランカーとして活躍していました。
しかし、世界最高峰と言えども同じタイプのフランカーを6番、7番で起用するより、198cmの高さを持つブラインドサイドフランカーのスペシャリストを起用する方がチームにとってプラスであると、マイケル・チェイカヘッドコーチは判断したのです。
スクラムの組む場所
ソース:Sky Sports
フランカーがスクラムを組む場所について説明しておきます。上記写真の6番・7番のフランカーは、スクラムやラインアウトなどのセットプレーにおいて、スペースによって組む場所が変わってきます。
どういう事かと言いますと、下記のイラストでは背番号⑦番がオープンサイドフランカーになります。(プロップ1番のお尻を押します。)
逆サイドのスクラムになった際もオープンサイドフランカーがスペースの広い方にセットし(プロップ3番のお尻を押します。)次のアタックorディフェンに備えます。。
フランカーについてだいぶ分かってきたところで、チームを勝利に導く上で必要不可欠な両フランカーの役割についてさらに詳しく見ていきましょう。
まずは、現代ラグビーの花形ポジションとして人気が高いオープンサイドフランカーの役割についてです。
オープンサイドフランカーの役割とスキル
背番号7番のオープンサイドフランカーは、豊富な運動量と機動力でアタックでは随所に姿を見せ攻撃の継続に大きく貢献します。
ディフェンスの能力も非常に高く特にタックルスキルはチームで1番と言っても過言ではありません。低く鋭いタックルで何度も観客を沸かせてくれます。
また、オープンサイドフランカーは、ブラインドサイドフランカー比べサイズは小さいですが、スピードがあり、常に低い重心でグラウンドを駆け巡りブレイクダウンを制します。(ブレイクダウン=密集のこと)
世界のトップオープンサイドフランカーの平均体重は90kg以上です。ブレイクダウンでの強さと速度のバランスが取れる体重、つまり、スピードと耐久性を持ち備えた体が90kg以上ということになります。
オープンサイドフランカーには必要とされるのはサイズよりもパワーです。タフなタックル、比類なき強さでブレイクダウンを制するためのパワーが要求されます。
パワーも持った選手が多く、自分よりはるかに大きくより早い選手と、アタック&ディフェンスでマッチアップする事が可能な唯一の選手です。
例えば、ボールを持った足が速いウイング 対 体が大きいプロップの1対1だと、どっちが勝つか予想がつきますよね。恐らくウイングが得意なステップでプロップを抜き去るでしょう。
↓ステップの参考動画です。
オープンサイドフランカーは、どのポジションが持っているスキルとも対等に戦い合う事ができます。
チームで最強の選手というわけではないですが、比較的容易にフォワードの選手を1発のタックルで仕留めるほど強靭です。
オーストラリアのオープンサイドフランカー、マイケル・フーパーは幾度となくフォワードの選手をタックルの餌食としてきました。
↓イングランドのNo.8へのタックル
パワフルですよね。
こんなスーパースターが21年のトップリーグの舞台で見れるとはなんと光栄なことでしょう。
一緒にプレーが出来るトヨタ自動車のフォワードの選手達は超幸せ者です。
それでは、深掘りしてディフェンスとアタックに分けて役割を見てみましょう。
ディフェンス
チームでオープンフランカーを務めるのであれば、下記の能力の最低でもどちらかは1番である必要があります。
”タックル数”と”ターンオーバー数”です。(ターンオーバー=守備側が攻撃側のボールを奪うこと)
チームのディフェンスリーダーとして、圧力をかけ、攻撃権を降り戻すスキルが期待されます。
スクラムでのディフェンス
スクラムでは、スペースが広いオープン側に1アーム(片手)でスクラムを組みます。プロップのお尻をロックと同時に押しますが、如何に素早くスクラムからブレイクできるかが重要です。
そのため、スクラムを押すことよりも、スクラムからボールが出た時のタックルを意識する必要があります。相手の攻撃を嗅ぎ分けるため、軽くスクラムから離れているプレイヤーもいます。フランカーを自由に動けるスクラムは強いチームの証です。
スクラムから最初のタックラーとなる可能性が高いオープンサイドフランカーは、相手のバックスのサインプレーを予測し、ターンオーバーが出来るチャンス、ジャッカルができるチャンスがどこにあるのか予想します。
ラインアウトでのディフェンス
http://www.theroar.com.au/
ラインアウトでは一番最後尾にポジショニングする事が多く、相手バックスへの距離も一番短いです。(ラインアウト=スローインから始まるセットプレー)
ラインアウトモールが出来ても、できるだけ巻き込まれないようにケアする必要があります。相手フォワードが強くてモールが止まらない場合はモールに入る必要がありますが、オープンサイドフランカーの役割は、モールからボールが出た後のプレッシャーです。
↓ラインアウトからのモールはこちらの動画を参考にしてください。
ボールが出たらアタックの10番(スタンドオフ)を狙いながら、10番の内側から足り込んでくるランナー(特にブラインドウイング)もケアする必要があります。
別サイトですが、こちらのサイトではブラインドウイングを使ったサインプレーについて確認できます。
2次、3次でのディフェンス
オープンサイドフランカーは誰がボールを持っているかでディフェンスのコース取りが変わります。ディフェンスラインに参加しながら、どこに危険が潜んでいるかを予知し重要なタックルを決めます。
タックルを決めたら、すぐに立ち上がりボールを絡みます。膝をつかず、両足を地面につけてボールに絡みます。→ 「ジャッカル」と言います。
ソース:http://okurugger.exblog.jp/tags/
また、ブレイクダウンでボールの上を越えるチャンスがあると判断した時は、勢いよく相手をプッシュしボールの上を越え、ターンオーバーに成功します。(ターンオーバー=守備側が攻撃側のボールを奪うこと)
続いて、アタックにおける役割とスキルを説明します。
アタック
オープンサイドフランカーのアタックにおいてもっとも期待される役割は「攻撃の継続」に寄与するスキルです。
現代ラグビーはディフェンスがタイトで、連続して攻撃することが容易ではありません。オープンサイドフランカーはラックやモールの攻撃を”単発”→”連続攻撃”に変えるスキルが必要とされています。
つまり、オープンサイドフランカーのアタックスキルとしてチームに期待されるのはサポートの”速さ”です。
ボールキャリアの背中の羽のようにフォローするコースが理想とされているため、最低でもセンターに追いつくスプリント能力が必要です。
ボールキャリアがタックルに入られた時に、オフロードパスで繋ごうとしていないか常にケアしておく必要があります。
↓オフロードパスは下記動画を参考にして下さい。オフロードマスターと称されるソニー・ビルのオフロードパスです。
また、スクラムでもラインアウトでも2次、3次の攻撃でもボールキャリアがどこでタックルされるかを予想し最短のコースでポイントに参加しブレイクダウンを制する必要があります。
時に、バックスラインに参加し素早いハンドリングスキルでウイングまでボールを展開することもあります。
ルーズボールに最初に行き、ボールを拾いあげモールを形成するか、ラックを形成するのもオープンサイドフランカーの役割です。
↓ラック&モール ガイド
偉大なオープンフランカーには、ワールドカップ2連覇を成し遂げたオールブラックスのキャプテン リッチー・マコーの存在があります。
相手の攻撃を止めるタックルスキル、強力なボールキャリア、ターンオーバースキルを持ち備え、相手チームから嫌がられているマコーは「世界で最も嫌われているラグビー選手の1人」。
そして、ルールを理解し、レフェリーのジャッジの癖を覚え試合をコントロールした偉大なリーダーでした。
歴代で偉大なオープンサイドフランカーと言えば、日曜日には宗教上の理由で試合に出場しなかったにも関わらず、オールブラックスに選出され続けたマイケル・ジョーンズ。
そして、2011年、2015年WRCでオールブラックスを2連覇に導いた主将リッチー・マコウの存在があります。
では、続いてブラインドサイドフランカーの役割とスキルを説明します。
ブラインドサイドフランカーの役割
近代ラグビーにおける、ブラインドフランカーは代表クラスで185cm以上 100kg以上の体格です。
ジャンパーとして起用されるため、オープンサイドフランカー以上の高さが求められます。
花形のオープンサイドフランカーに隠れがちですが、ブラインドサイドフランカーは、オープンサイドフランカー、No.8の他にもロックでもプレーする事が出来ます。
サイズや、ボールキャリアとしての貢献度を踏まえるとオープンサイドフランカーがブラインドフランカーの役割を果たすのは難しいでしょう。
ブラインドサイドフランカーは、プレイヤーとしては多様性を持つ一方で、非常に専門的なポジションであります。
チームの中でも背が高く、強く、アタックとディフェンスの両面で重要な役割を果たす事が期待されます。
アタック
アタック時は第3のセンターとしてチームに貢献します。優れたボールハンドスキルと、状況に応じてボールを持ってしかけブレイクダウンをつくります。
チームのアタック力を強くするためには、ブラインドサイドフランカーの突破力は必要不可欠です。激しい突破でブレイクを奪いディフェンスを混乱させる力があります。
オープンサイドフランカーとの役割の違いは、オープンサイドフランカーが、「単発攻撃を連続攻撃に変えボールを前に運ぶサポートのプロ」に対し、ブラインドサイドフランカーはNo.8並の突破力でゲインラインを超えるペネトレーターです。
№8の突破力がイメージ出来ない人は、下記の動画を確認するとよいでしょう。日本代表の№8でありスーパーラグビーの豪州最優秀選手にも選ばれたマフィのプレー集です。
もちろんボールキャリアとしてだけでなくサポーターとしても、随所に激しいブレイクダウンでボールを確保するプレーも見られますが、チームとしての期待値はボールを前に運ぶ仕事です。
ディフェンス
オープンサイドフランカー同様にディフェンスではブレイクダウンでのひつこい圧力でアタックの攻撃を遅らせます。
しかし、オープンサイドフランカーほどの低く突き刺さるタックルスキルは備わっていませんが、オープンサイドフランカー並のディフェンススキルが必要となります。
スクラムでのディフェンス
ブラインドサイドフランカーは常に、スペースが狭い方にセットしスクラムにつきます。相手№8がブラインドサイドに攻撃を仕掛けてきた時は、スクラムから素早く離れNo.8を見る必要があります。
しかし、オープンサイドに攻撃された時は逆です。素早くブレイクする事はおすすめできません。急いで第1センターや第2センターの後ろまで行くことは不要と考えます。
ゆっくりとボールをなめながらボールが十分に動いて、ボールをインに返されない(例:スタンドからブラインドウイング)可能性がない事を確認して動く必要があります。
「インに返す」というプレーがイメージつかない方は、下記の動画をご確認ください。一番最初のサインプレーです。
ラインアウトのディフェンス
ラインアウトではジャンパーの位置に立つことが予想されます。そのため競り合った後にモールの中心になることもありますが、出来るだけモールに巻き込まれず自由に動けるようにしたいです。
自分がモールに参加する必要があるのかないのか?常に考えてプレーする必要があります。
バックスへのプレッシャーは、一気にラインを押し上げるオープンサイドフランカーに対し、ブラインドサイドフランカーは、ボールの動きを見ながら、相手の攻撃を予想しオープンサイドフランカーが見れないコースを走ります。
ショートラインアウトでは、バックスラインに参加するためこの限りではないですが、オープンサイドフランカーとの必死のコミュニケーションによりチームのディフェンスをマネージメントします。
2次、3次以降のディフェンス
プラインドサイドフランカーの2次、3次以降のディフェンスについては、チームの戦術、または、陣地により異なります。
オープンサイドフランカーのように、プレッシャーをかけ早い段階で攻撃を止めてチャンスを演出するか、バックスラインがブレイクされた時の2列目として仕事をするかのどちらかです。
また、ラック時では、アタックがブラインドサイドに攻撃を仕掛けて来た時のために、ラック付近をパトロールすることも期待されています。
いずれにしろ、ボールキャリアを捕まえた後は、ジャッカルを狙うのはもちろん、ターンオーバーでもボールを勝ち取ろうとします。
偉大な、ブラインドサイドフランカーとして名前が出てくるのはやはりこの選手、オールブラックスのマイケル・ジーョンズの存在があります。
彼は元々、オープンサイドフランカーでしたがフォワードのしての強靭な強さと、優れたバックススキルを武器に、偉大なるブラインドサイドフランカーとして、名を刻んでます。
W杯2019で活躍する選手では、オールブラックスのアーディー・サヴェアを参考にするとよいでしょう。彼はブラインドフランカーでの出場機会が多いですが、№8でも活躍出来るポテンシャルの高さを持っています。(190cm 102kg)
以上、フランカーの役割とスキルについて説明致しましたが、まとめです。
体格
オープンサイドフランカーは、高さがなくても活躍できるポジション。一方で、ブラインドサイドフランカーは、ジャンパーとしても起用されるので高さが必要。
アタック
オープンサイドフランカーは、超高速サポートによるボールの継続。センターに追いつくスプリント能力が必要。
ブラインドサイドフランカーは、自らの突破力で前に出れるパワーが必要。
ディフェンス
どちらにも、高いタックルスキルと、ブレイクダウンでの激しい攻防が期待されます。
チームの中で
タックル数No. 1
ターンオーバー数No. 1を、常にどちらかが達成する事が求められます。
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